第390話 SNS時代に問われる企業の正直さ

8月19日の日経MJに「企業のネット炎上、顧客や従業員が「告発」」というテーマで企業の正直さが問われていると奔流 eビジネス 徳力基彦氏がレポートしています。

 7月にデジタルマーケティング研究機構が「デジタルマーケティングの未来予測」をテーマにフォーラムを開催した。基調講演で注目されたキーワードが「オーセンティシティ」だ。直訳すると、信頼性や真正であること。少しなじみのない英単語だが、ウソがない、ホンモノであることが求められる時代になっているというのがポイントだ。と伝えています。

顧客や従業員による「告発」がSNSで拡散してメディアの目に触れるケースが増えている=AP
そのため、広告もステマをしないのは当然で、無理やり調査で捏造(ねつぞう)する「No.1広告」のような手法についても厳しく問われることになる。

このオーセンティシティの重要性は広告やマーケティング領域に限った話ではない。最近も企業の様々な騒動が話題になったが、考えるべきなのは、多くの騒動が従業員や顧客による「告発」によって引き起こされている点だろう。

従来の日本企業のネット炎上は、どちらかというとアルバイトや従業員がSNS(交流サイト)に不適切な投稿をして引き起こされるものというイメージを持っていた人が少なくない。

そのため、多くの日本企業ではネット炎上のリスク回避で従業員のSNS利用や勤務中のスマホ利用を禁止するというケースがみられていた。実際にSNSを使わなければ、SNS投稿を起点とした炎上は発生しにくくなるかもしれない。

ただ、最近の騒動で明らかになってきているように、深刻なネット炎上というのは企業のずさんな衛生状態や、顧客に対する広告のウソなど、企業自体の問題がネット上に「告発」されたときに発生するのだ。

特に、最近の炎上騒動は、顧客や従業員が企業の問題行動や発言を著名なユーチューバーに告発したり、顧客や従業員自身の怒りのSNS投稿が拡散してメディアの目に触れるというケースが増えている。

もはや企業側がSNSを使っているかどうかは関係ない。ウソが告発によってバレやすくなっている時代だからこそ、オーセンティシティがより重要になっているとも言えるのだ。

このキーワードが最初に業界で注目されたのは、十数年前に書籍「経験経済」の著者としても知られるパイン氏とギルモア氏が「オーセンティシティ(邦題・ほんもの)」という書籍を出版したタイミングだったと記憶している。当時からオーセンティシティが重要であったし、その前から重要だった言葉と言える。

ただ、現在間違いなく状況が変わっているのは、SNSの普及で顧客や従業員の怒りの「告発」が実に短時間で大きな話題になる時代になってしまったと言うことだ。1つの怒りの投稿がその日のうちにネットメディアで取り上げられ、ポータルサイトに転載され、そのままテレビのニュースで流されることすら、もはや珍しくなくなっている。

逆に言えば、企業側や従業員の「神対応」が顧客やファンの感動を呼び、それが大きな話題になることもありえる時代になっているということでもある。

「正直者が馬鹿を見る」ということわざがあるが、SNS時代は「正直にやっていないものが炎上する」時代になるかもしれない。自分の会社がオーセンティシティに取り組めているかどうか。今のうちに考えてみることをお勧めしたい。

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