第447話 丸亀製麺の欧州展開にFC導入
日本食の真の国際化が進もうとしています。海外展開の外食チェーンがFC展開での拡大を目指しています。直営展開が主流であった中、海外でのFC展開は克服すべき課題も多い。しかし国産の大手チェーンが取り組む姿はこれから海外進出を目指す飲食業界の良い道標となることを期待して記事を紹介したい。
以下2023年9月23日 日経産業新聞より
【ロンドン=今出川リアノン】トリドールホールディングス(HD)の粟田貴也社長は、英国にも出店しているうどん店「丸亀製麺」の欧州展開に関し、「フランチャイズチェーン(FC)で広げる」との考えを明かした。人手不足などに悩む欧州では、店舗数の拡大に伴うリスクを抑える上でFCが最適とみる。まだ直営店の展開にとどまる中、FC導入に向けて取り組む構えだ。
出店攻勢、まず認知度向上
粟田氏は丸亀製麺の海外戦略について「欧州で広がるとすれば、間違いなくFCシステムを用いる」と述べた。
トリドールは2021年7月、英国の首都ロンドンに丸亀製麺の欧州1号店を出店した。以降の2年間で出店を重ね、23年8月末時点でロンドンに10店舗、英南部レディングに1店舗を構えるなど、店舗数を急速に増やしている。
「まずはうどんと丸亀の認知を引き上げる」。今までのスピード出店の狙いを粟田氏はこう話す。丸亀は全店舗で小麦粉からうどんを打つことに加え、比較的安価な価格が魅力だ。インフレ環境下で外食費の高騰が目立つロンドンでも、並盛りのかけうどんを6.95ポンド(約1200円)で提供している。
さらに英国では数年前から日本食ブームが続く。各スーパーではテイクアウトのサンドイッチの横に、すしパックが置いてあるなど日本食が浸透する中、地元民からの高い人気も集める。
3〜5年かけ黒字化めざす
一方で、直営店で店舗網を広げる足元を粟田氏は「先行投資の時期」と位置づける。現状ではまだ欧州の店舗で利益は出ていない状況だ。
金融街シティ近辺のリバプールストリートにある、欧州1号店では立ち上げ時から「高い売り上げを上げている」(粟田氏)。ただ、利益については他の店舗も含めて3〜5年の間に黒字化を目指すとする。23年4〜6月期の決算資料でも、英国の丸亀製麺の事業は「成長のための投資が先行している状態が続く」としている。
こうした中で認知の高まりと合わせ、FC形式を導入できれば、直営店のみの展開にとどまるよりも収益の改善が見込める。FCは加盟企業も初期投資を一部担うため、本部側も店舗拡大に伴う負担を軽減できるからだ。「直営も出すが、それ以上にフランチャイズ展開を増やしていきたい」と位置づける。
さらに欧州各国では人手不足の問題も深刻となっている。粟田氏は「直営であれば全てを我々が抱え込むことになるが、人材などを持っている外食企業や他の企業と手を組むことで(人手不足)の問題は比較的緩和していける」と、FCの利点をみる。
すでに欧州でのフランチャイズパートナーの募集は始まっている。
丸亀製麺をまずロンドンで展開した理由について、粟田氏はロンドンの多民族性や多文化性を挙げ、「ここで成功できれば汎用性が高い」と述べた。FC展開は英国だけでなく、フランスやドイツなど「周辺国は十分視野に入っている」とも明かした。
海外6倍の4000店計画
トリドール傘下で丸亀製麺は、連結売上高の5割以上を占める重要なセグメントだ。23年3月期には過去最高の売上高を記録した。国内の店舗数も傘下のブランドで最大となる832店舗にのぼる。
ただ、今後さらに成長を進める上では海外での店舗拡大が欠かせない。同社は28年3月期までの中長期計画で、丸亀製麺を含むトリドール傘下のブランドの海外店舗数を、23年3月期の約6倍となる4000店舗に増やす計画を掲げる。
トリドール傘下には丸亀製麺以外にも、天ぷら専門店や焼きそば専門店などのブランドもある。丸亀製麺以外のブランドが今後ロンドンに進出する可能性に関し、粟田氏は「期待していてほしい」と含みを持たせた。
さらに自社ブランド店舗の拡大だけでなく、現地の外食企業のM&A(合併・買収)も狙う。直近では7月、外食に特化した欧州投資ファンドであるキャプデシア・グループと共同で、ピザ店「フランコマンカ」などを展開する英フルハムショアを買収している。