第529話 「なぜ節約志向でも外食は減らないのか?家計の“苦しい現実”から見える消費の新常識」

物価の高騰が続く今、私たちの生活にも大きな変化が訪れています。特に食料品の値上がりが顕著で、自炊すらも「節約にならない」という声が増えてきました。しかし、こうした状況下でも外食の需要が大きく落ち込むことはなく、むしろ一定の安定を見せているのです。いったい、なぜ節約志向の家計が「外食」を手放さないのでしょうか?

消費マインドは低下、でも“外食”は減らない?

1~3月期の経済統計では、個人消費の低迷が明らかになりつつあります。消費者態度指数は4カ月連続で低下し、特に3月は約2年ぶりの低水準に。実質賃金の低迷、エネルギー価格の上昇といった背景から、家計の財布の紐はより一層固くなっているはずです。

こうした状況では、旅行や外食といった「選択的支出」が最初に見直されるのが通例。しかし、今回のデータを見ると少し様子が異なります。家庭での食料消費は減っている一方、外食の消費は増加傾向にあるのです。

外食を減らせない理由は「時間」と「コスト感覚」

この背景には、大きく2つの理由があると考えられます。

1つ目は「共働き世帯の増加」です。働き手が家庭内に複数いる現代では、自炊の手間や時間的コストを避ける動きが加速しています。疲れて帰ってきた後に買い物をして料理をするよりも、サッと外食で済ませる方が現実的だという判断です。

2つ目は「食品価格の高騰」です。近年、野菜・肉・魚などの食材価格が大幅に上がっており、まとめ買いや下ごしらえの工夫があったとしても、自炊のコストが以前ほど安く感じられなくなっています。むしろ、価格を抑えた外食チェーンをうまく利用した方が“割安”と感じる家庭が増えているのです。

節約志向でも「賢く外食」を選ぶ時代に

外食需要が回復した理由として、コロナ禍明けの反動もありますが、それだけでは説明がつきません。実際に家計調査では、外食の頻度が増加している一方で、単価はむしろ下がっていることが明らかになっています。

これは、「より安価な外食先」を選ぶ傾向が強まっていることを示しています。たとえば、高級店が多く登録されているレストラン予約サイト「TableCheck」の利用件数が伸び悩んでいる一方、ファストフードやファミレスなどの利用が増えているのです。

つまり、家計は外食そのものを避けるのではなく、その中でいかに節約するかを工夫しているのです。

経験則”に縛られない消費動向をどう読み解くか

これまでの常識では「節約=外食を控える」と考えられてきました。しかし、今はその“経験則”が通用しない時代。食品価格の上昇やライフスタイルの変化により、外食は「贅沢」ではなく「日常の効率的な選択肢」として位置づけられつつあります。

もちろん、これは外食が「楽になった」という話ではありません。家計の負担は増しており、選択の余地が限られる中で、やむを得ず「割安な外食」へとシフトしているケースが多いのです。

私たちが見落としがちな消費のリアルがここにあります。「外食が増えている=消費が強い」という単純な話ではなく、節約と効率、生活のバランスを取るための“苦しい選択”であることを理解しておくべきでしょう。

店舗ビジネスにとってのヒント

外食需要が減らないという現象は、飲食店にとってはチャンスでもあります。
ポイントは「低価格×時短×安定品質」。
この3点を押さえた業態は、今後も選ばれ続ける可能性が高いでしょう。

東洋経済オンラインより

 

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