第530話(米国最新情報)「アレルギー対応で売上25%UP?今レストランが注目すべき成長戦略」

外食業界にとって、食物アレルギーへの対応は「リスク」ではなく、「成長の機会」である――。アメリカの非営利団体FARE(食物アレルギー研究教育)とテクノロジー企業EveryBiteが発表した最新レポートは、レストラン業界に向けたそんなメッセージを強く打ち出しています。

アレルギーを持つ顧客は“優良顧客”だった

アメリカではおよそ10人に1人が何らかの食物アレルギーを抱えていると言われています。この層が年間で外食に費やす金額はなんと190億ドル。しかも、彼らは「お気に入りの店」に忠誠心が高く、外食時の単価も高めという特徴があります。

つまり、食物アレルギーに配慮したサービスを提供することで、リピーターを獲得しやすく、客単価も上がる。レポートでは、アレルギー対応によってレストランの利益率が最大24%も向上する可能性があると指摘されています。

課題は「現場の対応力」

しかし、現実には多くのレストランがこの市場に十分対応できていないのが実情です。従業員がアレルギーについて適切な知識を持っていなかったり、メニューにアレルゲン情報が記載されていなかったりと、基本的な準備が整っていないケースが多く見られます。

FAREのCEOソン・ポブレテ氏は、「アレルギー対応は厨房だけでなく、接客やメニュー表示まで含めた総合的な対応が求められます」と指摘。単なる表面的な対処ではなく、店舗全体での教育や仕組みづくりがカギだと語ります。

解決の鍵は“デジタルメニュー”

そこでFAREとEveryBiteは、アレルゲンや食事の好みに応じてフィルタリング可能な「動的デジタルメニュー」の導入を進めています。これは、レストランのWebサイトやQRコードからアクセスできるシステムで、顧客が自分のアレルゲンを事前に確認しながら安全に注文できるというもの。

この仕組みにより、スタッフへの確認が減り、注文時のやり取りがスムーズになります。また、EveryBiteは注文履歴やアレルギー情報をもとに、顧客の嗜好をデータとして蓄積・分析できる点も強みです。

「現場スタッフがすべてのアレルゲン情報を把握するのは現実的ではありません。だからこそ、テクノロジーで補う必要があるのです」とEveryBiteの共同創業者ルーシー・ローガン氏は語ります。

データを活用し、顧客ニーズを反映したメニュー作りを

EveryBiteが提供するシステムでは、小麦や乳製品など、どのアレルゲンに関する注文が多いのかが可視化され、今までは「なんとなく」で決めていたメニュー改善に、確かな根拠を与えることができます。

同社のCEOシド・コンクリン氏は、「店頭で聞こえる“噂”ではなく、確実なデータで判断できるようになる」と話します。すでに50を超えるブランド、4000以上の店舗で導入が進んでおり、1,000,000人以上の顧客データをもとにした「ダイナートレンドレポート」も発表されました。

このレポートでは、アレルギーを持つ人に人気の料理として「クリスピーカリフラワー(グルテン・乳製品不使用)」や「サウスウエストチキン&ライス(卵不使用)」が紹介されており、メニュー開発の参考にもなります。

外食ビジネスの未来は「データドリブン」

この取り組みは、外食業界が従来の“感覚”や“経験”に頼った運営から、より“データドリブン”な経営にシフトしつつある流れとも合致しています。特にコロナ禍を経てオンライン注文が普及した今、顧客情報を活かすことは不可欠です。

FAREは、「アレルギー対応の徹底は、レストランにとっても、アレルギーを持つ顧客にとってもWin-Winの関係を築ける」と強調。今後ますます増加が見込まれるアレルギー人口を考えれば、今この分野に注目することは、競争優位性の確保にもつながるでしょう。

 

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